ろうときょう

漏斗胸

最終更新日:
2022年12月27日
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2022/12/27
更新しました
2021/05/18
更新しました
2017/04/25
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概要

漏斗胸とは、胸の真ん中がへこんだ形状になる病気のことです。

男性に多く(男女比は約4:1)見られ、発症頻度は1,000人に1人程度とされています。生まれつき胸の変形が目立つケースもありますが、乳幼児期のぽっちゃりとした体型が、身長が伸びて成人の体型に近づくなど、成長とともに変形が目立つようになるケースも少なくありません。

漏斗胸の原因は、胸の骨格を形成する骨・軟骨・筋肉の発達異常が関与しています。軽度な場合は胸の変形以外に症状はありませんが、重度な場合はへこんだ肋骨(ろっこつ)や胸骨が肺や心臓を圧迫して心肺の機能異常が見られることがあります。また、これらの症状がない場合でも胸が変形していることから自分に自信が持てず、日常生活や社会生活に支障をきたすケースも少なくありません。

漏斗胸は基本的に治療の必要はないと考えられていましたが、この認識は誤りです。その事実から、漏斗胸患者さんの治療が見過ごされてしまっているのが現状です。

漏斗胸の治療で行われる胸のへこみを修正する手術は、見た目の改善や心肺機能の異常の改善が期待できます。漏斗胸で悩みや不安がある場合には専門家に相談することが大切です。 

原因

漏斗胸の発症原因ははっきり分かっていない部分も多々あります。私たちの胸の骨格は、胸骨・肋骨・脊椎と胸骨・肋骨をつなぐ肋軟骨で構成されています。

漏斗胸の発症メカニズムはいくつかの説があります。漏斗胸から猫背の悪循環を繰り返しているうちに、大きな深く見える漏斗胸になる症例も多くみられます。肋軟骨が過度に成長して胸の内側に巻き込まれるように変形するという説、肋軟骨が脆弱(ぜいじゃく)なため呼吸をするごとに肋軟骨がへこんでいくという説などが挙げられます。

このように、漏斗胸は胸の骨格やそれを支える筋肉の発達の異常によって引き起こされると考えられていますが、その多くに遺伝が関与しているとされています。

そのほかにも、アデノイドや扁桃肥大(へんとうひだい)によって“いびき”をかきやすい小児が漏斗胸を発症しやすいとの報告もあり、強いいびきをかく症例は胸腔内圧が陰圧になるためと考えられています。

症状

漏斗胸の症状の現れ方や進行の仕方には大きな個人差があります。

乳幼児期から胸のへこみが目立つケースもあれば、成長するにつれて徐々にへこみが目立つようになるケースも少なくありません。また、胸のへこみ方も重症度によって大きく異なり、軽症の場合は胸のへこみが目立つことはありませんが、重症の場合は大きく胸の中心がへこむため外見にも影響を与えます。漏斗胸では心臓の圧迫を軽減するために猫背になります。この猫背が悪循環となり、さらに深い陥凹を形成するので注意が必要です。

また、軽症の場合は軽度な胸のへこみ以外に症状はありませんが、胸が大きくへこんでいる場合は、肺や心臓を圧迫して肺活量の低下、運動時の息切れ・呼吸困難感、胸痛、不整脈などの症状を引き起こすことがあります。気道感染を繰り返しやすいのも特徴の1つです。

さらに、漏斗胸はこれらの症状がない場合でも“見た目”の異常があるため、人前で着替えができない、水泳の授業に参加できない、自分に自信が持てないなど日常生活・社会生活に支障をきたすような精神的負担が生じやすいことも問題となります。

検査・診断

漏斗胸は、“見た目”から容易に診断をすることが可能です。しかし、肺や心臓への影響を調べたり、治療方針を決めたりするには次のような検査が行われます。

画像検査

胸骨、肋骨、肋軟骨などの形状を調べるため、X線、CT、MRIなどの画像検査が行われます。画像検査では重症度を判定するだけでなく、肺や心臓への影響の程度を評価することも可能です。

心機能検査

心臓の機能を調べるため、心電図検査や超音波検査が行われることがあります。心電図記録による評価は手軽に行える検査で、検査した直後に評価できるため、もっともよく行われる検査です。ただし、形成外科の医師だけでは十分に心電図検査を理解できない場合もあるため、循環器内科の医師と一緒に診察する必要があることから、割愛される場合も多いです。不完全右脚ブロック様パターン・V1の陰性もしくは二相性T波等は、漏斗胸症例に典型的な心電図変化です。軽症例では認められない場合もあります。超音波検査は心臓の形状を観察することもできるため、積極的に行われる検査です。

呼吸機能検査

呼吸機能に異常があると疑われる場合は、肺活量・一秒率の測定・フローボリューム曲線の照射などの呼吸機能検査が行われます。

治療

軽度な漏斗胸であれば治療の必要はありませんが、上述したような症状がある場合、外見上の観点から強い希望がある場合は治療を行います。

治療方法は重症度や年齢によって異なりますが、肋軟骨が柔らかい小児の場合は大きな吸盤で吸引して胸を持ち上げる治療が行われます。一方で、吸引してもへこみが十分に改善しない場合、肋軟骨がある程度固くなっている場合には、へこんだ胸の骨の下にプレートを通して骨や肋軟骨を持ち上げる“Nuss法”が行われます。Nuss法は、左右の側胸部を小さく切開し、内視鏡を用いながらプレートを挿入するため体への負担が少ないとされています。以前は、へこんだ肋軟骨や肋骨を切除して胸の形を修正する大掛かりな手術が行われていましたが、体への負担が大きいため近年ではNuss法が行われるのが一般的です。

予防

漏斗胸の発症メカニズムは遺伝によるものが多いといわれています。このため、遺伝子治療を待つ以外に現在できる方法はなく、予防法も確立していません(2021年5月時点)。しかし、成長とともに症状が進行していくことも多いため、胸のへこみに気付いたらできるだけ早めに病院を受診することが大切です。乳幼児期からのタスキをすることで姿勢を正し、猫背を改善して悪化を防ぐ方法などが行われます。

漏斗胸は“いびき”をかきやすい小児に発症しやすいことも分かっており、扁桃肥大やアデノイドが大きい小児はそれらの治療をすると漏斗胸を改善できる可能性があるとされています。

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  • 笠置 康 先生 (愛媛県)

    松山笠置記念心臓血管病院 病院長、社会医療法人 笠置記念胸部外科 理事長

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